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【レポート】IBMによるブロックチェーン技術の導入事例を紹介【DAPPS KANSAI】

2019年4月10日に大阪で開催されたブロックチェーン技術の導入事例の紹介イベントに参加してきました。
DAPPS KANSAIが主催の「DAPPS KANSAI #4 ブロックチェーン・プラットフォームをみんなで考えよう!」と題された今回のイベントは、IBMのブロックチェーン導入のグローバル先進事例などを参考に、ブロックチェーンの適用分野や事業化に関するディスカッションを行うワークショップ形式の勉強会でした。
IBM様のブロックチェーン導入事例
当日のブロックチェーン導入事例の紹介として、日本アイ・ビー・エム株式会社 ブロックチェーン・ソリューションズ 事業部長の髙田様が実際の導入事例として、アメリカのウォルマート社と共にブロックチェーンを導入した事例を紹介していただきました。
ブロックチェーン技術といえば、まだ一般的には実証実験をしていたり、試験段階だったりといったイメージがあるとおもいますが、実際にはすでに商業レベルでは導入されて利用されています。そして、その導入によって従来の台帳システムでは不可能であった様々な問題が解決されていました。
ご紹介している動画の中では店頭で販売されているマンゴーの流通情報を、ブロックチェーンを利用して農場から店頭までにどのようなルートを辿ってきたかを調べることができ、それに必要な時間はどのくらいかかるか?といった問いに関して「結果は秘密ですよ」と話されていますが、この流通を調べるのに必要な時間は約2分と公開していただきました。これがもし、ブロックチェーンを利用しない場合は約7日の日数を必要とするそうです。
ブロックチェーン技術を導入することによってのメリット

今回のウォルマート社におけるブロックチェーン技術の導入事例では、どのようなメリットがあるかを見てみましょう。
時間的な制約から解放される
ウォルマート社では、世界中から仕入れた食材を販売しています。もし何かの問題があり、食材の流通や出荷した農場を特定するためには、従来の方法で調べると約7日間の時間を必要とします。
これは、農場から配送した業者・仲介した市場・代理店を経由して各店頭に配達されるために「どこで・誰が・何をおこなったか」を1つ1つさかのぼって調べる必要があるためです。
ですが、ブロックチェーン技術を導入するによって、この作業が約2分で完了してしまいます。
コストがかかる
従来の物流管理は、まだ主に紙ベースなので、納品書と実際の商品が間違っているなどの問題があれば、その都度修正が必要となります。また修正のやりとりもFAXや書類の配送といった手段を利用しているため、国をまたぐと膨大な時間と手間が発生します。
また食品の場合には、この修正を行っている間に腐敗が進むこともあるので、商品としての価値がなくなり廃棄処分にかかるコストも必要となってきますが、こういった問題についてもブロックチェーンは解決できます。
情報の偽造ができなくなる
物流システムでは、様々な業種の方々が関わっているため、その中でのトラブルや意図的な不正行為が発生しかねません。
このようなトラブルが発生すると、調査にも非常に多くの手間が発生しますが、ブロックチェーンでの台帳管理は、第三者の監視や、内容の変更などがあれば全て記録され個人で勝手に書き換えることができないので、管理システムの精度も非常に高く保つことができます。
なにより食の安全が保証される
アメリカではレタスから大腸菌の感染があり210名が感染したニュースがありました。このようなニュースは過去何十年の間でもたびたび発生していましたが、今日まで改善の目処が立っていませんでした。
その理由としては、食材に問題があった場合には、その出荷元や流通経路、販売店舗を調べる間に数日が経過してしまうので、そのあいだに様々な場所で売られているその食材を不特定多数の顧客が買ってしまうからです。
もしブロックチェーン技術が導入されていたらどうでしょうか?
瞬時に、問題が特定され販売店舗も特定できるので、被害の拡大を数分で収めることができます。これは、過去何十年かかっても改善できない大きな改善でした。
食の透明性を確保できる
このようなメリットから実際に商業利用しているウォルマート社ですが、ブロックチェーン技術を使用することでビジネス的優位な立場になるつもりはないそうです。
実証実験などはウォルマート社で行いましたが、同社は業界の長年の問題を解決することは食品業界の安全性を高めるつもりで取り組んでおり、ウォルマート社以外の世界的大手の食品会社でも同様に導入されています。
このようにブロックチェーン技術で改善できるタスクが非常に沢山あるので、消費者に食の安全を届けることができ、長年の業界での問題点も解決できるといった大きなメリットが沢山ありますね。
ブロックチェーンの問題

ブロックチェーンにはメリットも沢山ありましたが、どうしても解決できないデメリットもありました。
それは、データは正しくても商品が偽造されてしまう場合です。
ある国では医療薬品の70%が偽造品として出回っており、流通の途中で商品ごとすり替えられてしまうこともあるようです。
流通データでは問題がなくても、商品自体のすり替えを人為的に行った場合には、ブロックチェーンでは改善ができず、この問題は国際貿易において問題視されています。
そのためにIBMでは、ホコリ程度の大きさで1990年代のPC程のスペックを持った超小型コンピュータを開発し、それを商品と混ぜて流通させることによって、すり替えデータ自体を改ざんできないような対策もしているようですが、まだ導入コストが高価になることから普及が難しいとの課題もあるようでした。
他にもブロックチェーン技術が利用できるシーンを考えてみる

今回のイベントでは導入事例を元に、他にもブロックチェーンを利用して便利になることはないかをディスカッションしました。
例えば、医療業界での患者様のカルテや薬の履歴、建設業界での資材や情報の管理、社内での管理システムやコニュニケーションの手段としてブロックチェーンを導入していくことが実現できれば、世の中がさらに効率的で便利になるメリットがあります。
まだまだ次世代の技術として期待されるブロックチェーンですが、一部では本格的に商業利用が開始されその必要性が実証されています。もちろんその他の技術も新たに開発されており、今後、様々なサービスが新たに生まれていくことでしょう。
ブロックチェーンにより、スマートコントラクトや利便性の高いサービスが提供される時代は、そう遠くないのかもしれませんね!