ファイルコイン(Filecoin)で注目されるIPFS技術とは?
メインネットのローンチを今夏に控え、再注目されているFilecoin(ファイルコイン )。
そのファイルコインにはIPFSという通信技術が使われていますが、初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。その実態を知っている人はシリコンバレー界隈のエンジニアでもまだ少ないといわれています。
IPFSは、ネットの安全性を担って現在一般的にサイトで利用されるプロトコルである「HTTP」を凌駕するインターネット構造とされています。
今回は次世代のネット通信に変革を与える技術であるIPFSに関する解説とファイルコインが注目される理由をご紹介していきます。
IPFSとHTTPの違いとは?
改革的な高速技術であるIPFSは、従来型のメインサーバーとなる設備が不要となります。
たとえばwebを見ていると、気になったサイトをクリックしたときにとても読み込みに時間がかかったり、ある程度時間を使って読み込んだ結果「404」とエラー表示となったりした経験はありませんか?
従来のHTTP方式では、ネットワークをたどってデータが置いてある場所へ情報を読み込みにいくため、リンクが一つ切れただけで転送が完全に断たれてウェブページやメディアファイルが表示されなくなってしまいます。
一方、IPFSはHTTPのように「場所」に管理されるものではなく「内容」にフォーカスして認識するため、「こういう内容の情報」というコンテンツの内容自体を直接指定して情報にアクセスすることが可能になります。
これによって保管場所が1箇所にある必要がなくなり、コンテンツはハッシュ値で管理されることから、本来データが管理されているサーバが何らかの原因でダウンしたとしても、同じハッシュ値のデータを持っている他の場所から同じ情報を取得することが可能です。
つまり、一部のサーバがアクセスを遮断されても、他のどこかの別のサーバから同一の情報が取得可能になることにより、ユーザーは情報を得ることができます。
また、コンテンツの場所を指定しないIPFSでは、同じコンテンツを複数のサーバから取得できる場合、より近いサーバから取得することになり、一つのサーバーに負荷が集中することを防ぎ処理速度が早まります。
IPFSによるデータの分散化
従来のHTTPでは、インターネットにつきまとっていたセキュリティ問題やデータの重さでWebサイトが落ちると言った問題があります。
しかしIPFSでは、データがハッシュ値で管理され分散して保管され、また、コンテンツのサイズが一定量を超える場合(256KB以上)には、データ量を256KB以下に分割して管理されます。
分散されたデータを複数の保管場所から読み込んで1つに組み合わせることから、より素早くコンテンツを取得することが可能となります。
これによってP2Pで繋がったネットワーク上のコンテンツ転送が効率化され、データの高速取得が可能となり、HTTPの課題となっている大量のデータ保管による弊害が解消されると考えられています。
ファイルコイン(Filecoin)の役割とは?
以上のようにIPFSはHTTPに比べて様々な利点がありますが、解決すべき問題点も存在します。
例えばフェイスブックは、SNSサービスを充実させてユーザーを確保し、取得したビックデータを活用しての広告収入等を得ることで収益化しています。
これはコンテンツデータを自身のサーバーに保管しているため、他のサービスから外部にデータを提供することがないために成り立つビジネスモデルです。
しかし、IPFSではP2Pネットワークがデータをシェアしながら保存するため、コンテンツを保持する人と、そのコンテンツでビジネスを行う人が一致しません。
この課題を解決するためのプロジェクトがファイルコイン(Filecoin)です。
ファイルコインはプルーフ・オブ・スペースタイム(Proof-of-Spacetime)という、IPFS上にストレージを提供した時間や量に応じてファイルコインが与えられるシステムによって、IPFS参加者がコンテンツを保持することで実質売上が発生する仕組みとなっています。
企業は大量に保有するデータを管理するためのサーバー設備などに莫大な資金と維持費をかけており、また、今後5Gが導入されることでさらに大量のデータを管理する設備が必要となることから、その負担とリスクの増大が予想されています。
そうした不安を解消するIPFSは企業にとって魅力的であり、すでにウィキペディアやグーグルなどを始めとした大手企業が採用を発表しています。
従来のHTTPにはないメリットを有したIPFSは、まだ実験段階にも関わらず実際のサービスでの利用が始まっています。