廃熱源の情報提供でトークン報酬|持続可能なエネルギーへの取り組みにブロックチェーンを活用
ブロックチェーンの利用というと、ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)の取引をイメージされることが多いかもしれません。しかし、ブロックチェーン技術はSDGsへの取り組みにも活用されはじめています。
2020年5月、オーストラリア政府は、ブロックチェーンを利用して持続可能なエネルギーへ取り組むプロジェクト「HotCity」へ資金提供を行いました。
本記事では、持続可能なエネルギーへの取り組みとブロックチェーン技術の利用について解説します。
ブロックチェーンと持続可能なエネルギーを結びつける
持続可能なエネルギーへの取り組みを行う「HotCity」のプロジェクトは、廃熱源の情報収取手段としてブロックチェーン技術を利用します。
このプロジェクトでは、ブロックチェーンを活用して、廃熱源を知っている人が積極的に情報提供したくなる仕組みを作ることで、エネルギーに関するSDGs(持続可能な開発目標)に結びつける大きな一歩に繋げようとしています。
廃熱発電とは
廃熱源とは、廃熱発電に使われるエネルギーのことです。
「廃熱」は「排熱」と表現されることもありますが、この2つには違いがあります。
- 排熱:機器や設備などから排出される熱エネルギー(再利用される)
- 廃熱:機器や設備から排出され、破棄される熱エネルギー
例えば、機器からでた排熱エネルギーは、水を温めるなどの再利用が行われています。一方、温まってお湯になった状態から発せられる湯気を再利用しなければ、湯気という熱エネルギーは廃熱ということになります。
廃熱発電は、このように「破棄される熱エネルギー」を再生可能エネルギーとして利用しようとする発電方法です。
廃熱源の情報は地域の人々の目撃情報が効率的
工場の機器や温泉などから排出されるような比較的規模の大きい廃熱は、場所の特定も容易なため、すでにその多くが利用されています。
しかし、小規模な廃熱源は認識されていないものが多いことから、まだ再利用されていないものが多く存在しており、そのような小規模な廃熱源の情報を収集すれば、再生可能エネルギーとして使える可能性があります。
そこで利用したいのが、地域住民による廃熱源の情報提供です。
その地域をよく知る人々から、廃熱源の位置情報を、写真やGoogleマップを利用して報告してもらいます。これにより、地域別の潜在的な廃熱源情報を取得することを計画しています。
ただし、人々からの情報は無料で提供されるわけではありません。
廃熱源情報を提供して報酬を得る仕組み
地域住民が廃熱源情報を無料で提供する仕組みでは、期待するほどの情報は集まらないでしょう。そこで利用されるのがブロックチェーン技術です。
ブロックチェーン上に構築されるプラットフォームでトークンを発行し、提供される情報に応じたトークン報酬を与えます。
廃熱源の情報を得る側が、情報を提供する人々に報酬を与えるプラットフォームを用意することで、積極的な情報提供が期待されます。
廃熱源を見つけて情報提供すれば報酬がもらえるという仕組みは、ゲーム性もあることから積極的な参加を促すことができると考えられています。
報酬として得られたトークンは、デジタル資産としてブロックチェーンで保護されるため、多くの情報を提供すれば、それだけ自分のデジタル資産を増やせるということです。
このように、ブロックチェーン技術とゲーム性、そして報酬という要素を備えることで、持続可能なエネルギーへの取り組みに多くの人々を巻き込み、大きな規模でSDGsに取り組めます。
ブロックチェーンとゲーム性は相性が良い
ブロックチェーン上に構築されるプラットフォームとゲームは相性の良いものといわれています。
すでに、イーサリアムをベースとしたブロックチェーンゲームは無数に存在しており、アイテムをトークンで売買したり、キャラクターを育て勝負に勝つことでトークンを得たりするゲーム性は多くのユーザーを惹きつけています。
さらに、そこに持続可能なエネルギーへの取り組みのようなプロジェクトを融合させるアプローチは、期待できる試みだといえるでしょう。
ブロックチェーンの利用はSDGsの積極的な取り組みを加速させる
廃熱源を再生可能エネルギーとして利用するための情報は、SDGsの目標7である「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」にあたります。
収集されたデータを利用して廃熱発電を実現すれば、「どこにでも存在して枯渇せず、CO2を排出しない」再生可能エネルギーが活用できるのです。
また、見つけにくい廃熱源の情報も、ブロックチェーンを利用したゲーム性のあるプラットフォームを活用することで、人々の積極的な参加を期待できるでしょう。
今回紹介した「廃熱源」の情報収集のようにブロックチェーン技術が使われることは、SDGsへの取り組みを加速させるものになるかもしれません。