マイニングは環境を破壊するのか、ブロックチェーンの環境問題とは
ブロックチェーン技術は私生活やビジネス、社会の仕組みに至るまで、さまざまな分野に広がることが見込まれています。
これは、データの透明性やセキュリティの確保という側面を見ても、これまでのシステムより優れているからです。
一方、ブロックチェーン技術が利用するエネルギー量が、環境に悪影響をおよぼすという懸念も上がっています。
ブロックチェーンが与える社会への好影響
ブロックチェーン技術は、データを安全かつ半永久的に保存できる技術として注目されており、仮想通貨(暗号資産)をはじめとする資産取引やサプライチェーン、透明性の高い証明のインフラ技術として新たなアプリケーションやサービスが次々に生まれています。
例えば、野菜農家から出荷される商品のサプライチェーンをブロックチェーンで管理することで、安全性の高い野菜が消費者に届けられます。
消費者は、自分たちが口にする食物が安心なものであることを、スマートフォンやパソコンで確認ができますし、野菜農家は自分たちの商品がどのように消費されているかを見届けることができます。
このように、ブロックチェーンは私生活や社会生活、経済に好影響を与える技術として分野を問わず利用され、社会全体に好影響を与えるインフラ技術として活用され始めています。
マイニングが環境を破壊する?
一方、ブロックチェーン技術が環境破壊につながるという懸念もあります。
これは、ブロックチェーン技術を利用した仮想通貨(暗号資産)のマイニングに、膨大なエネルギーを使っているためで、例えば、ビットコインのマイニングだけでも、アイルランドの島全体が年間に使用するエネルギーを使っているという報告もあります。
マイニングに利用するマシンのCPUスペックが高ければ、それだけ大きな電力が必要で、企業や団体によっては、マシンをデータセンターや大型の施設で運用するため、その消費電力は莫大なものです。
つまり、マイニング競争が激化するほど多くのエネルギー消費につながり、それはCO2排出などの環境破壊につながるという悪循環が起こっています。
また、ブロックチェーンに電力を供給するために必要なサーバーへの依存度が高まることでも、サーバー自体が建物の物理的な部屋を占有し、大量のエネルギーを浪費するため環境に影響を及ぼします。
すべてのマイニングが環境を壊すわけではない
上述したように、ビットコインのマイニングだけを見ても莫大なエネルギーが消費されています。
しかし、仮想通貨(暗号資産)のマイニングすべてに、同じ量のエネルギーを使うわけではなく、ブロックチェーン上に構築されるアプリケーションやシステムもまた、必ずしも大量のエネルギーを消費するようなものではありません。
ブロックチェーン技術に期待されるものは、データ改ざんが極めて困難なこと、透明性を持ったデータ記録が行えることです。
このような特徴を生かせば、インターネットを介していつでも信頼性の高いデータを扱えるシステム構築が可能になるため、例えば、資格証明書などをブロックチェーン上で管理できるならば、紙の証明書が不要になりペーパーレス化に対応可能であったり、CO2排出量をブロックチェーンに記録すれば、ブロックチェーンを基盤としたシステム上で取引が可能になり、カーボンオフセットに対する活動ができます。
また、消費財によって引き起こされる環境への被害の90%はサプライチェーンの問題という報告にもある通り、複雑なグローバルサプライチェーンは環境問題を生み出している大きな要因の1つですが、その改善にもブロックチェーンが活用されはじめています。
これらのようなブロックチェーン技術を利用したサービスは、環境改善へ寄与するとともにSDGsに関する取り組みにもつながります。
また、ファイルコインなどのプロジェクトを通して、データセンターが環境に与える影響を小さくできる可能性もあります。
ブロックチェーンによるエネルギー消費と環境問題
ブロックチェーン技術は、仮想通貨(暗号資産)取引におけるマイニングという点で考えれば膨大なエネルギーを使う要因になっています。
しかし、上述のとおり、ブロックチェーン技術によって環境保全に繋がる様々な新しいサービスが生み出されていることも事実です。
環境問題を考える際には、マイニングという側面のみではなく、ブロックチェーン技術によって生み出されるサービスがどのように環境に影響を与えるのかを正しく理解していくことが大切だといえます。