Nori(ノリ)|NFTを用いたカーボン・オフセットシステム

Nori(ノリ)|NFTを用いたカーボン・オフセットシステム

二酸化炭素(CO2)排出量削減への配慮は、多くの電力を必要とする暗号資産やブロックチェーンなどweb3.0分野でも大きな関わりがあります。

今回ご紹介する『Nori(ノリ)』は、ブロックチェーン技術を用いてカーボン・オフセットの仕組みを提供するプロジェクトです。

農家への資金援助

大気中のCO2を減らす取り組みとして注目されているものの1つに、農地と生態系を保全・回復することに重点を置く環境再生型農業があります。

従来の農業では、生産性を重視してきた結果、土壌の劣化やCO2排出量の多さが問題となっています。

環境再生型農業では、耕さない栽培方法の採用や、積極的な有機肥料の利用、地面を覆うように生える被覆作物を植えることなどを通して土壌の回復に努めることが特徴です。これにより土壌に多くのCO2を吸収、蓄積することができると考えられています。

Noriでは、こうした環境再生型農業を行う農家から提供されるデータから土壌に貯蔵されている炭素の量を推定を行い、それをもとにNRT(Nori CarbonRemovalTonnes:ノリ炭素除去トン)を発行、販売を行っています。また、その利益は当事者に直接送られます。

現在までにNoriは、環境再生型農業を行っている約10の農場に対して、100万ドル以上の資金が提供できているといいます。

また、近い将来、ブルーカーボン(海洋生態系に取り込まれた炭素)やCO2直接回収技術など、合理的で信頼できる方法に拡大する予定だとしています。

NFTによる証明書の発行

カーボン・オフセットにおける問題の1つは二重支払いです。

二重支払いが行われると、支払った金額よりも多くCO2削減に貢献したという扱いになり、実際に削減されたCO2の量が増えず、気候変動への対策としては不十分な結果を招くという事態になりかねません。

国際会議でも、こうした点は問題視されています。

Noriはこの課題解決にブロックチェーンを活用している点で、他団体が提供するカーボン・オフセットのシステムと大きく異なっています。

Noriにカーボン・オフセットとして資金を提供する際には、非代替性トークン(NFT)であるNRTを購入する形で行われるため、ダブルカウントを防ぐことが可能です。

さらに、Noriは今後、仮想通貨NORIの発行を予定しています。

この仮想通貨は、1NORIが1NRTと交換できる仕組みになっており、購入と同時にバーンされます。

これにより、NORIが何度もNRTとの交換に使われることを防ぐことができるため、こちらもダブルカウント対策となっているといえます。

Noriの課題と今後の対応-ETHブロックチェーンからの脱却

Noriの課題としては、CO2削減を推進するためのシステムそのものが、環境に必ずしも優しいとは言えないイーサリアムブロックチェーンを利用しているという点です。

イーサリアムブロックチェーンは、分散型金融(DeFi)やNFT取引などさまざまなシーンで利用されていますが、承認アルゴリズムにプルーフ・オブ・ワーク(PoW)を採用していることから、電力効率が良くないという問題点を抱えています。

なぜNoriはイーサリアムブロックチェーンを採用したかについて、「多くの開発者ツールを備えたブロックチェーンで、当時は他に選択肢がなかった」と説明し、その対策として、ETHのセカンドレイヤーであるポリゴンブロックチェーンに移行を進めています。

ポリゴンブロックチェーンはイーサリアムブロックチェーンと比較して処理速度が速いうえに、承認アルゴリズムに電力効率が良いとされるプルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用しています。

そのため、これまでと同じ量の処理を行っても、電力消費量は小さくなり、CO2排出量を抑えることができるようになると考えられています。

また、ポリゴンブロックチェーンは、イーサリアムブロックチェーンのセカンドレイヤーであるため、イーサリアムブロックチェーン上に作成したNFTやトークンをそのまま流通させることも可能です。

現時点でNoriは、ポリゴンブロックチェーンはイーサリアムブロックチェーンの2つのシステムが並行して稼働していますが、2022年6~7月をめどに両システムを統合すると説明しています。

Noriは「ブロックチェーンの不変性は、クレジットの透明性を確保し、炭素の価格をより透明に設定できる」と説明しています。