仮想通貨やブロックチェーンの活用|SDGs(持続可能な開発目標)への6つの可能性
仮想通貨というと、投機の対象や詐欺や犯罪の道具として使われる怪しいものと思われている方や、あるいは、実用化についてまだまだ遠い先の未来のように考えている方が多いのかもしれません。
しかし、実際にはさまざまな企業では、すでに一般向けにサービスを開始していたり、開始に向けたテスト段階だったりと、各国の法規制との兼ね合いはあるものの、着実に世の中に浸透しはじめているのが現状です。
たとえば、日本でも先日、JR東日本が6月からスイカのチャージに仮想通貨を使用できるように計画しているとのニュースもありました。
また、公共交通だけでなく、飛行機のチケットやタクシー、宿泊予約などでも仮想通貨が使用できるようにもなってきていますし、公共料金の支払いに仮想通貨を導入しようとする自治体も増えてきています。
こうしてみてみると、社会をより効率よく便利にしていこうとする流れは着実に進んでいるといえますが、さらに最近では、ブロックチェーンの公平性や透明性、安全性などの特徴から、人道支援や環境保護、平和構築などへの活用にも期待されています。
国連では「Beyond bitcoin(ビットコインのその先)」として、ブロックチェーンがSDGs(持続可能な開発目標)に対して次の6つの可能性があるとしています。
ブロックチェーンのSDGsへの活用
- 金融包摂を支援
- エネルギーへのアクセスを改善する
- 責任のある生産と消費を促す
- 環境を保護する
- すべてに合法的な身元を提供する
- 援助効果を向上させる
1.金融包摂を支援
いまだ世界中では多くの人が銀行口座を持つことができていません。また、国際送金にかかる手続きの煩雑さや手数料などの問題もあります。
しかし、スマートフォンと電話番号さえ手にすることができれば仮想通貨の口座は簡単に作れますし、安く、速く、安全に個人間で送金することができるようになります。
2.エネルギーへのアクセス改善
ブロックチェーンとIoTを組み合わせることで、太陽光や風力、水力、地熱といった再生可能エネルギーの利用が促進される可能性があります。
また、再生可能エネルギーを生み出す企業や、それを使う人々への評価をすることができるようにもなります。
3.責任のある生産と消費
ほぼすべての国がグローバルなサプライチェーンに依存しているので、その効率化と透明化は、多くの人にとっての利益となります。
また、環境や生態系に配慮した小規模農家に対して公正な賃金を支払うことや、地産地消の促進などにも繋げることができます。
4.環境保護
森林面積の減少は著しく、経済活動を目的とする無理な土地利用によって砂漠化へ進行している地域は多数ありますが、気候変動や災害に対するリスク回避、生態系などの観点から対策が必要です。
そのような地域の植林活動だけでなく、それを実施する地域社会に対して個人が直接、安全にすばやく投資を行うことができます。
レバノンの事例:http://www.livelebanon.org/
5.身元の提供
危機的または極度の貧困状態で生活している人々は、そこから脱却しようとしても身元を証明することができないために、援助や医療、法的保護にアクセスすることが困難です。
しかし、ブロックチェーンによるデジタルIDを作成することで、そのような人々がさまざまなサービスや援助を受けやすくすることができるようになる可能性があります。
また、土地の登記簿などの所有物についても、紛失や、詐欺、汚職によって改ざんされたりする可能性がありますが、ブロックチェーンの特徴を生かすことでそれを防ぐことができます。
6.援助効果の向上
グローバルな開発組織として、UNDPは世界中に多額の資金を移動し移動します。非効率性を識別し、効果を最適化し、汚職と闘うことは、私たちの仕事を達成し、私たちのドナーとパートナーの信頼を保つための資金を確保するために極めて重要です。
ブロックチェーンを利用することで、巨大な資金を保有する企業や団体が、高価な仲介者を必要とせずに資金を提供することができるため、慈善事業などの資金調達がしやすくなる可能性があります。
課題点
以上のように、ブロックチェーンには、SDGsの進展に大きな影響を与える可能性がある一方で、強力な法制度や紛争解決メカニズムが整っていない限り、ほとんど意味がないことや、デバイスそのものを所有することができないこと、インターネット環境が無いといったデジタル格差といった課題があります。また、コンピューターの処理能力や、それらを維持し続けるためのエネルギー問題もあります。
これらは議論や技術が成熟していくことで解決されていく可能性が十分ありますが、現段階の状況を理解することはブロックチェーンの可能性を最大限に引き出すために不可欠です。
貧困の軽減や、民主的ガバナンスと平和構築、気候変動、災害リスク、経済的不平等など、様々な解決していきたい課題があるなかで、ブロックチェーンを活用できる方法に注目していきたいと思います。