環境省が主導、ブロックチェーンが支える「J-クレジット」とは
ブロックチェーン技術は、仮想通貨(暗号資産)取引だけに使われる技術ではなく、環境問題解決への取り組みやエネルギー問題にいたるまで、さまざまな分野でブロックチェーンを使った仕組みが実施・検討されています。
今回は、国が推進する「Jークレジット」でブロックチェーンが活用されていることや、そのメリットについて解説します。
環境省が主導する「Jークレジット」とは
「Jークレジット」とは、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を、国が「クレジット」として認める制度のことで、地球環境問題を解決するための1つの手段です。
このJークレジットの創出者(温室効果ガスなどの削減をする人・企業)は、作り出したクレジットを売却できます。
例えば、温室効果ガスを30%減らさなければならないA国があるとします。しかし、現状では30%を削減することが難しく、そのままではルール違反となってしまう場合があるとします。
このとき、B国が販売するクレジットを購入すれば、A国がどうしても削減できない温室効果ガスの30%を相殺できるという仕組みです。
これは、地球上のどこかが温室効果ガスを削減すれば、削減できていない別の場所の分を補えるという考え方で成り立っています。
たくさん削減できた国や企業はクレジット売却し、売ったお金でさらに環境問題に取り組むという好循環ができると考えられています。
さらに、そこで発生するのが「クレジット」の取引市場で、ここでブロックチェーンの活用が検討されています。
Jークレジットでブロックチェーンを活用するメリット
なぜクレジットの取引市場でブロックチェーンが活用されるのでしょうか。
そこには、ブロックチェーン技術で実現できるメリットがあるからです。
高い改ざん耐性
ブロックチェーン上のデータは、取引に関わるすべての人が閲覧可能であるため透明性を保つことが出来ます。
また、ブロックチェーンに記録されたデータは、すべてがブロック単位で格納されており、ブロックとブロックはハッシュ値によって連続しているため、一部を改ざんするためには、その他のブロックも改ざんしなければならないため、膨大な労力がかかります。
これらの要因から、一度記録された取引データを改ざんすることは容易ではありません。
ブロックチェーンは改ざん耐性が高く、取引に対する透明性と信頼性が担保できるというメリットがあります。
取引手続きの自動化
あらかじめ決められた手続きを自動化できる「スマートコントラクト」という仕組みがあります。
この仕組みをブロックチェーン上で利用すれば、取引情報の記録だけでなく、契約内容や条件も自動的に施行できます。
Jークレジットを売買するための細かな申請や認証など、諸手続きを簡略化できることはもちろん、一連の手続きを自動化できるため、クレジット取引がスムーズになります。
手続きのスマート化でリアルタイムクレジット取引が可能に
スマートコントラクトでクレジット発行などの手続きが簡単になることで、手続きのために時間がかかるといった事態を回避できます。
また、ブロックチェーンとスマートコントラクトを利用することで手続きはスマート化し、リアルタイムに取引が可能となります。
手間が少なければ参入コストも抑えられるため、中小企業や一般家庭などの規模でもJークレジットが利用しやすい環境を構築することが可能です。
プラットフォームの拡大(ビジネスモデルの多様化)
ブロックチェーンとスマートコントラクトを利用した核となるプラットフォームにアクセス権限を持たせることで、その利用範囲は広がります。
Jークレジットにプラットフォームを接続するとき、手続きや決済処理などの大きなシステム変更が必要ないため、ある企業が独自に開発している環境問題解決のためのプラットフォームを比較的簡単に連携できるようになります。
Jークレジットへのプラットフォーム接続が容易になることで、さまざまなプラットフォームが参入できるためビジネスモデルが多様化し、プラットフォームの拡大へとつながります。
ブロックチェーン活用でJークレジットの取引参入ハードルが下がる
Jークレジットの取引にブロックチェーンを活用することで、データの改ざんリスクを回避できるほか、手続きの自動化によって取引参入ハードルも下がります。
環境問題解決のためには大手企業や国家だけでなく、中小企業や家庭といった小さな単位でのボトムアップ的な取り組みも重要です。
Jークレジット制度を確立しても、手続きや申請が複雑だったり、取引に不透明さがあったりすると、参加するためのコストも多く掛かるため、簡単に制度を利用することが難しくなるでしょう。
ブロックチェーンの活用は、幅広い層がより簡単にJークレジット制度を利用できるプラットフォームを作り上げるための重要な技術といえます。