ブロックチェーンで資格証明書を発行 | 紙を利用しない証明書のメリット
ブロックチェーン技術の主な利用目的は、「データが改ざんされない」ことや「データが半永久的に保存できる」ことです。
この特徴は、仮想通貨(暗号資産)取引に限定されることなく、エネルギー取引やサプライチェーンなど様々な分野で活用できます。
その中でも今回は、個人の価値にブロックチェーンを活用する「資格証明書のデジタル化」について解説します。
IT分野の資格証明書にブロックチェーンを使用
ブロックチェーン技術は今、個人の価値である資格証明書にも使われようとしています。
資格証明書はこれまで、主に紙やプラスチック製のカードなどをベースに作成されることが基本だったため、個人が資格取得したことを証明するには、これら資格取得時に授与されるモノが必要です。
もちろん、PDFなどのデジタルデータで資格証明書を発行することもできましたが、だれもが編集・改ざんできるデジタル情報では意味がありません。
そこで注目されたのがブロックチェーン技術です。
ブロックチェーンならば、データの価値を半永久的に保存でき、また、改ざんされる心配もほぼありません。
つまり、資格取得情報をデジタル化し、それをブロックチェーンに記録することで、唯一無二の証明書として、信頼性のある資格取得証明書を発行できるということです。
ブロックチェーンを利用した資格証明書のメリット
資格証明にブロックチェーンを利用することによって得られるメリットは何でしょうか。
そこには、改ざん耐性の高さや半永久的にデータを保存できるほか、SDGsへの取り組みにつながる効果もあります。
証明書の破損や紛失を防止
資格証明書は個人の価値を表す重要なデータであり、破損や紛失をできる限り避けなければなりません。
資格証明書にブロックチェーンで管理すれば、データが半永久的に消えません。
ブロックチェーンは、いわば分散型のデータベースですので、証明書を保存しているサーバーが1か所壊れたとしても、同じブロックチェーンに参加しているノードのどこかにデータが存在します。
つまり、一元管理されているデータベースよりも、失われてはいけないデータを保管することに適しているといえます。
紙の利用削減による環境保全
データが改ざんされる心配もなく、半永久的に保存できるという条件ならば、資格証明書の発行も可能です。
資格証明書がデジタル化されれば、従来利用されていた紙の証明書を発行する必要がなくなり、それは紙資源の利用を減らすペーパーレス化につながります。
また、紙を送付する作業なども省略できるため、送付のために必要な封筒などの紙資源節約にもなるでしょう。
いつでもアクセスできる利便性
資格証明書がデジタル化されるということは、資格取得者は紙の証明書を保管する必要がなくなり、いつでもインターネット経由で資格証明書を提示可能になります。
これにより、資格取得者が証明書を管理する手間も省けますし、利便性の向上が期待できます。
適用される資格
資格証明書へのブロックチェーン導入は、LasTrust株式会社と株式会社サートプロによって実証実験が行なわれます。
対象となる資格は、IoT検定制度委員会が実施する「IoT検定」です。
IoT検定は、近年普及しつつあるIoTの知識や技術、IoTを使ったマーケティングやサービス提供といった広い分野をカバーする資格で、資格には大きく4つのレベルがあります。
- IoT検定ユーザー試験:パワーユーザー
- IoT検定レベル1試験:プロフェッショナル・コーディネーター
- IoT検定レベル2試験:プロフェッショナル・エンジニア
- IoT検定レベル3試験:プロフェッショナル・アーキテクト
ブロックチェーンで資格証明が得られるのは、上記の中の「IoT検定レベル1試験:プロフェッショナル・コーディネーター」の資格取得証明書です。
この実証実験は、以下のようなロードマップで進行していきます。
- 2020年9月:実証実験開始
- 2020年10月:証明書デジタル化の予備提供開始と市場調査
- 2020年11月:資格証明書デジタル化の検証
- 2020年12月:資格証明書デジタル化の本格運用
スムーズに進行すれば、比較的早い時期に本格運用が開始されます。
まとめ
ブロックチェーン技術で資格証明書が発行されれば、資格取得者の証明書管理も不要になりますし、利便性も高まります。
また、発行する側にとっても紙資源の節約になり、SDGsの取り組みにもつながるでしょう。